西田辺の文化棚から「アイデア 276」


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当時のアイデアはグラフィックデザインをシーンとして扱っていました。日本と世界をバランス良く配してとても読み物として充実している印象がありました。正しさ、なんてよりもグラフィックデザインの胸が高まる内容になっていたように思います。今はなんというは、アーカイブ感とノスタルジーが漂っている印象がとても強い。まとめられた何か、ではなくて、その創作が、形にした理由が知りたい時代でもあったんだなあと思います。そういう意味で冒険していたとも言えるし、これに比べれば今はちょっと守りに入ってるかなという印象です。276といえば1999年です。携帯電話が主流になり始めている頃、まだインターネットがISDNで、アンゴルモアの大王が世界が滅ぼすと信じられていた、そう、あの、いにしえの時代です。特集は日本人では中島英樹、葛西薫、横尾忠則、大竹伸郎が揃い踏み、海外もディラン・ケンドルといった、TOMATO大流行だった潮騒を掬い取った内容となっています。CDのジャケットをまとめる事で、未来を予感させて、サヴィニャックをアーカイブする事でその均衡を保つ、みたいな、なんとも読者に媚びない入魂雑誌に仕上がっています。まあ、デザインそのものは時代を感じるし、ちょうど、MAC以降、以前みたいな感じで、まだまだそれらが二分して、以前が居なく無くなり始めてドキドキしていた感じが全体で出ています。日本では広告デザイン、雑誌デザインが、まだまだ元気な頃だし、そういった無駄なパワーというか雑誌を手に取る人たちだけが主役じゃないんだ!という気概に溢れているのはとても伝わってくるし、旧式アイデアで出来る事を全てやったという感じでしょうか。もしくは、旧式のアイデア方式では掬い取れない何かを感じさせる一冊のようにも思います。これ以降、かなり雑誌としての変貌を遂げていく事になりますし、どんどんと内容が詰まった分厚いカタログのようなものになっていく話は置いといて、それくらい内容が薄く、1つ1つの特集がとても短いし、なんかグラフィックデザインかっこええええ、を全力で謳歌出来る一冊でもあります。でもまあ、この号に掲載されているグラフィックデザインには説明が不要なくらいパワーがあるって事なんだろうけど、または当時はそういうものが評価されていたんだよなあ。ADCだって、TDCだって、今よりも存在感があったし、作ったものへの、そのビジュアルへの信頼感というか、要素のシンプルな感じとかも含めて、だってほら、今ってなんでもゴッタ煮感が凄いじゃないすか。この時を継承してるグラフィックにしても、なんかもう悲しくも、素直じゃない、なんか変化球効きすぎだろ、ていう方向にシフトしているし、そうじゃないにしろ、この時よりも、なんともフニャリとなるものが多くなっている、と、この時を基準で喋るとそうなっちゃう感じはあります。それくらい、今と比べても、そのグラフィックの質の差があると思います。やっぱ、グラフィック、ビジュアルへの信頼感の一冊、という一語に尽きるかなあ。

 

ライター:fengfeeldesign(http://www.fengfeeldesign.org)