「Sit Down Young Stranger」は1970年にリリースされたカナダのシンガーソングライター、Gordon Lightfootの6枚目のアルバム。Randy Newmanがアレンジャーとして参加している。収録曲の「If You Could Read My Mind」がヒットした為、そのタイトルでもリリースされており、Apple Musicではそちらの名義で登録されている。全体的にこじんまりとしたこの時代特有のシンガーソングライターのアルバムといった仕上がりで、これといった特徴もないのだが、その無個性でいつでも聴けるあっさりとした70年代感が今の肌寒い季節にちょうど良い。Gordon Lightfootの歌声は中音域のバリトンで、少し翳りはあるものの暗さよりは穏やかさの方を感じさせる。歌い方も丁寧で、かといって心の底から感動するほどクオリティが高いわけでもない点にも好感が持てる。作品としてめちゃくちゃクオリティが高いわけでもなく、後半に行くに従ってだんだんと曲調に統一感がなくなっていくタイプのアルバムなのだが、その点もいかにもこの時代の作品っぽくて味わいがある。調べてみるとA面とB面で主要なアレンジャーが違っていて、A面の曲はほぼRandy Newmanがアレンジを担当しているのだが、それがB面ではNick DeCaroに変わっている。このアレンジの微妙な雰囲気の違いがアルバムの統一感を無くしている。A面はLeonard Cohenと「Nashville Skyline」のBob Dylanを足してNeil Diamondで割ったような世界観なのだが、そこにB面になった途端カーペンターズかなんだかよくわからない凡庸さが入り込んでくる。中でも雰囲気を壊しているのがヒット曲の「If You Could Read My Mind」のアレンジで、この曲にだけ入っている少し喧しめのオーケストラが、それまでギターと歌でしみじみ聴かせてくれていた雰囲気を次は「Yesterday Once More」なのか?くらい崩してしまう。またB面は「If You Could Read My Mind」のシングルのカップリングみたいな曲も多い。しかし聴きやすさという点から考えると地味なアルバムにちょうどいい起伏ができているとも言え、この辺りは好みの問題なのかもしれない。いずれにせよこのような音楽に聴きなじみのない人が聴いたら全曲同じに聞こえるアルバムであることは間違いないだろう。決して名盤とも言えない作品なのかもしれないが、この全体にみなぎっているGordon Lightfootとかいう人の風情がいい作品である。A面2曲目のクリス・クリストファーソン(『沈黙の断崖』のラスボスの人)のカバー、「Me And Bobby Macgee」が◎。
ライター:青のりしめじ(http://www.aonorishimeji.com)

(地下鉄蹴上駅近くの鳥居をくぐって10分ほど参道を登った途中の分かれ道。