西田辺の文化棚から 「Steve Winwood / Steve Winwood」


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「Steve Winwood」は1977年に発売されたイギリスのロックバンド、Trafficのボーカリストの1stソロアルバム。6曲しか入っていないのでメディアによってはEP扱いをされていることもあるが、正直あまりこの人のこともTrafficのこともよく知らないので個人的にはどうでもいいと思っている。Trafficは60年代末から70年代にかけて流行った、当時のロックバンドにありがちな田舎のおじさんがトラクター乗って畑耕しながら作ったみたいな曲ばっかりやっていたバンドで(偏見)、それでも当時は英国出身で全米ナンバー1を取ったり、エリック・クラプトンとBlind Faithというバンドを結成したりするほどの人気バンドだったようである。実際レコードショップに足を運ぶと1枚100円のワゴンの中にすらそのアルバムを見かけることがあるので、おそらく当時としてはビリー・ジョエルばりに旋風を巻き起こす存在だったのだろう(レコード屋の100円ワゴンは名声の証である)。この作品はバンドが解散してから3年後に作られたアルバムで、ソロアルバムの話自体はプロデューサーのChris Blackwellに1969年頃から打診されていたものの、バンドの活動休止や再結成、解散など様々なゴタゴタに巻き込まれて制作が頓挫。何度かの録音メンバーの変更や音源自体の録り直しを経て77年の6月にようやく発売された。作品は全編ブライアン・オーガーやシンプリー・レッドのような、英国産ブルーアイドソウルの香りをふんだんに感じさせるアーシーかつ根暗な作風になっており、Steve Winwoodの魔女狩りの生き残りのような儚く寂しいボーカルが、抑え目ながらもファンキーで温かみのある演奏に支えられてルーツ感とはまた違う独特の侘び寂びを醸し出している。それには77年という、ディスコにいくには中途半端、モッズというにはやや時代遅れという時代性も大いに寄与しているようで、アルバムのプロデュースにも「カーペンターズが流行ってるし壮大なストリングスでも重ねてみよう」みたいな乗っかり感がなく、それがこのアルバムを特定の音のイメージから回避させることに成功しているようである。厳密に言うとそういったイメージもそこかしこにちらほらと顔を覗かせてはいるのだが、一度Winwoodのボーカルが音に乗るたび、そういったイメージがすべてセピア色の、侘び寂びの世界に退行してしまうのである。最近の「こち亀」を読んでいると、案外時代の流行を気にかけているネタのチョイスに初めこそ関心を覚えるものの、結局絵柄がいつものこち亀なので、読んだ感想も「いつものこち亀」になるという、あの現象によく似ている。(※アルバムのプロデューサーChris Blackwellはアイランド・レコード創設者、つまりレゲエを世界に広めた人なので、このアルバムのベースやドラムの音処理にもどことなくレゲエ風の空気感が漂っている。それもこのアルバムの”わびさび”に大きな影響を与えているのかもしれない)また、このアルバムがリリースされた77年という時代はクラッシュが『白い暴動』を出し、セックスピストルズが全盛期を迎えていたロンドン・パンク元年で、この人ももちろんイギリス人なのでリアルタイムでその現象に遭遇しているはずである。それでいてこの仕上がりはやはり存在自体が侘び寂びの人なのだろう。最後に音楽的なことを少し付け足して書くと、このアルバム全曲でドラムを担当しているAndy Newmarkと数曲でベースを担当しているWillie Weeksは名コンビとして知られているらしく、2人とも1曲目「Hold On」のイントロから素晴らしい演奏を聴かせてくれる。彼らの演奏を聴くためのアルバムといっても間違いではないだろう。

ライター:青のりしめじ(http://www.aonorishimeji.com)

About aonorishimeji

雑誌『月刊タニシ』で連載中の漫画作品、「最強巻貝伝説」シリーズの作画を担当している漫画家です。時折LINEスタンプを作ったりする他、イラスト、文章などの制作などもしています。 2015/4〜 noteにて「最強巻貝伝説ZERO」を全話無料配信形式で連載中。 (CRITERION FREAKでも全部読めるようになりました!万歳!) https://note.mu/getutani ※2015/9/27放送の日本テレビ「ピース又吉のふみコミ苑」にて 雑誌『月刊タニシ』を取り上げていただきました! 万歳!万歳! 青のりしめじは現在作画、イラスト、文章、ネーム原作など、 漫画に関わるお仕事を媒体問わず広く募集しております。 何かありましたらお気軽にご連絡ください。 こちらより追ってご連絡差し上げます。 →tukamal1056@gmail.com aonorishimeji: japanese manga artist, sometimes illustrator. contact: tukamal1056@gmail.com twitter: https://twitter.com/tukamal1056 pixiv: http://www.pixiv.net/member.php?id=2661000 BOOTH: https://aonorishimeji.booth.pm/ suzuri.jp: https://suzuri.jp/aonorishimeji
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